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融資渉外担当者の憂鬱その1


融資審査を通しやすい稟議書を銀行員に書いてもらうために

 ご存じの方も多いかと思いますが、銀行の融資審査は、稟議によって行われます。
稟議とは、担当者が稟議書を作成して関係者(所謂レポートラインってやつです)にまわし、最後は決裁者(ケースにより支店長、本部審査部長、役員など)により承認をとることです。

 融資審査において稟議書は、まず担当者により作成されます。渉外担当係(営業)の担当がいる企業はその係が、そのような担当がいない企業においては支店融資係が、まず稟議書を作成します。

 融資審査は、その企業に対して行われる融資の総額、他行借入状況(条件等含む)、担保や信用保証協会保証があるかどうか、そして企業の債務者区分(正常先、要注意先などの区分)などにより、支店長にて決裁できる、つまり融資を行うかどうか決められる支店長決裁案件と、本部(審査部や融資部と言われるところ)で決裁する本部決裁案件とに分けられます。

 まず、支店長で決裁できる融資案件の場合、稟議書は次のように回覧されます。

 渉外係担当者→渉外係係長→融資係担当者→融資係長(支店長代理)→次長→支店長

 次に本部で決裁する融資案件の場合、稟議書は支店長から本部にまわされ、本部の審査役(部長の下の役職)や審査部長(融資部長)が決裁しますが、中には役員や頭取でないと決裁できない案件もあります。

 ここで頭に入れていただきたいことは、稟議書は全て、書面により回覧される、ということです。

 つまり最終決済権限者は、あなたの会社の定性部分(決算書や財務関係の数値に反映しない強みや今後のヴィジョンなど)は殆ど把握していません。
担当の渉外係に「うちの会社は、こういう技術を持っていて、その技術はこれだけの売上を将来もたらしてくれるだろう」というようなことを言っても、その1割ぐらいしか、決済権限者には伝わっていないことが多いのです。

 毎月、定例訪問する渉外係が、融資稟議起案に長けていて、聞き取りポイントを熟知しているなら、融資ファイルの貴社の債務者概況表などにレポートしており、毎月の試算表の銀行システムのデータ入力なども行っているものですが、私の過去の経験では、そのような担当者は1割以下だと思います。
ようするに、担当の銀行員にあなたの会社のことを口頭ベースでアピールしても、その
 大部分は、他の銀行員や決裁権限者には伝わらないのです。

 そのため、あなたの会社のことを書面の形(ドキュメント化)でアピールすることは、稟議書が回覧される全ての銀行員にあなたの会社のことを印象付け、融資審査を通しやすくするためには重要なテクニックと言えるのです。

誰が稟議書を書くのか

 また重要なのは、あなたの会社を担当する銀行員がどのように稟議書を書くかにより、融資審査が通るか通らないかが決まってくることです。

 渉外係の銀行員は営業ですので、業績を挙げるほど人事評価が高くなります。
特に融資量の増加は渉外係の銀行員に与えられる大きな業績目標の一つであり、融資を実行すればするほどその銀行員の人事評価は高くなるため、渉外係は「融資審査を通したい」考えをもっています。つまり、融資審査を通したいあなたの味方になってくれる存在です。

 対して融資係は、融資の貸倒れを出さないことが人事評価を高くすることにつながります。支店の朝礼などでも、融資係の報告は延滞率が・・・償却資産が・・・などが殆どです。貸倒れを出さない最も良い方法は、そもそも融資を行わないことなのです。
 
 ここで、あなたの会社がつきあいのある銀行一つ一つで、あなたの会社を担当する銀行員が渉外係なのか融資係なのかを見てみます。

 毎月あなたの会社に渉外係が訪問してくれるなど、渉外係があなたの会社を担当してくれているのであれば、その銀行員が融資審査の稟議書を書いてくれるでしょう。融資を行うことにより自分の実績になる銀行員が稟議書を書いてくれることは心強いことです。

しかし渉外係の銀行員があなたの会社を担当していない企業においては、融資の稟議書は融資係が書くことになります。融資係は、融資を積極的に行いたいとは考えていないものであり、そうであれば、銀行にお願いして、得意先係の担当者を付けてもらうようにします。

そして得意先係に毎月1回程度は訪問してもらうようにしてコミュニケーションをとり、融資を申し込んだ時に得意先係に稟議書を書いてもらうようにします。

稟議書を書きやすいようにしてあげる

 先ほども述べましたが、銀行員の中には、稟議書を書くのが得意な人もいれば、必ずしもそうでない人もいます。

 稟議書の材料は、全てあなたの会社から出てくるものです。日頃から積極的にあなたの会社のことを情報提供し、銀行員が稟議書を書く時に書きやすくしてあげるとよいでしょう。

 そして稟議書の構成は、おおよそ次のとおりとなります

  •  1.融資金額と条件(金利・期間・担保・保証人)
  •  2.資金使途(融資で出た資金を何に使うか)
  •  3.返済の財源は何なのか
       (長期融資や設備資金であれば将来事業で稼ぐ利益、短期融資であれば
        資金使途によりそれぞれ異なってくる)
  •  4.業績はどうか、財務内容はどうか、それに伴い保全(担保・保証人)の
      必要性はどうか
  •  5.なぜその企業に対し、銀行は融資をすべきなのか

 銀行員は1~4を肉付けし、その結果、結論として融資をすべきかどうか
 5を書いていくのです。

 これらを銀行出身でない人が書こうとするとなかなか難しいのですが、4の業績・財務内容については、銀行に悪い方向に見られないよう、企業が書面で説明し、将来の業績は期待できる、ということをアピールするようにするとよいでしょう。

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