はじめに
「自己資金はどこまで書けばいいの?」「親から借りたお金は自己資金に入るの?」――これは私が20年以上銀行員として創業融資の相談を受けてきた中で、数え切れないほど耳にした質問です。実際、東京日本橋で創業相談に来た30代の女性も、通帳を見せながら「これって自己資金と見てもらえるんでしょうか」と不安げに聞いてきました。創業計画書の自己資金欄は、審査官にとって「覚悟と信用度」を測る重要なポイント。本記事では、銀行員のホンネを交えながら具体的に解説します。
第1章:驚愕の事実 ― 自己資金ゼロは99%通らない
自己資金欄が「0円」の計画書は、審査の入り口で落とされます。
実務の失敗談
2011年、ある飲食店の男性が「必要資金500万円、自己資金0円、借入500万円」という計画書を提出。私は数分で「難しい」と判断しました。理由は「全額他人資本=事業リスクを背負う意思が見えない」からです。
👉 自己資金ゼロ=他力本願 とみなされ、審査は極めて厳しくなります。
第2章:事実で裏付ける ― 公庫公式が示す基準
日本政策金融公庫のでは、具体的な割合の明記は別段ありませんが必要資金の1/10以上の自己資金 を推奨しています。
シミュレーション
- 必要資金500万円 → 自己資金50万円以上
- 必要資金1,000万円 → 自己資金100万円以上
とはいえ、これは「最低ライン」。実務的には2割程度あると承認率は格段に上がります。
第3章:銀行員の本音 ― 自己資金欄で見ているのは「金額」ではない
銀行員は自己資金欄を見て、単に金額の多寡だけを判断しているわけではありません。
- 積立履歴があるか(通帳で毎月の努力が見えるか)
- 一括入金が不自然でないか(見せ金の可能性)
- 貯めた背景が説明できるか
👉 私が担当した美容室の事例では、80万円という少額でも「2年間コツコツ積立」を評価され、500万円の融資が通りました。
第4章:リアルな数字 ― 自己資金割合と承認率
私が勤めた信用金庫でのデータを整理すると以下のようになります。
- 自己資金10%未満 → 承認率20%
- 自己資金10〜20% → 承認率50%
- 自己資金20%以上 → 承認率75%
👉 数字が示す通り、20%がひとつの合格ライン です。
第5章: 「親から借りた資金は自己資金になるのか?」
よくある質問の一つです。
結論から言うと――
- 贈与(返済不要)であれば自己資金に算入可
- 借入(返済義務あり)は自己資金に含められない
- 審査では通帳の入出金履歴を必ず確認
👉 つまり「見せ金」は必ずバレます。
第6章: 不自然な入金で落ちた事例
2016年、あるIT起業家が100万円を短期間で入金し「自己資金」と記載しました。私は通帳を一目で見抜き、不承認。後日聞くと、親から一時的に借りた資金でした。
👉 金融機関の目は甘くありません。「コツコツ積み立て」が最強の武器です。
第7章: 自己資金欄の正しい記載方法
創業計画書の「自己資金」欄には、金額と内訳を正直に記載 しましょう。
記入例
- 自己資金:150万円
- 内訳:普通預金80万円(毎月積立)/定期預金50万円/家族からの贈与20万円
👉 こう書くと「信頼感」が一気に高まります。
第8章: 自己資金割合別の借入可能額
必要資金800万円の場合:
- 自己資金0円 → 借入ほぼ不可能
- 自己資金80万円(10%) → 借入720万円の可能性
- 自己資金160万円(20%) → 借入640万円が現実的
- 自己資金240万円(30%) → 借入560万円+金利優遇の余地
👉 計算式:
借入希望額 = 必要資金 - 自己資金
第9章:銀行員が見る「通帳のリアル」
- 毎月の積立履歴がある=信用度UP
- 直前の大口入金=疑念を抱かれる
- 給与振込から積立移動=誠実さの証拠
👉 2018年に担当したカフェ開業者は、月3万円を3年間積み立て90万円を用意。政策公庫審査官は「計画性がある」と評価し、承認を下しました。
第10章:まとめ ― 自己資金欄で未来を語る
自己資金欄は「今あるお金」を示すだけでなく、「これまでの努力と未来への覚悟」を映し出す鏡です。
結論
創業計画書の自己資金欄は、審査官にとって「数字以上のメッセージ」を持ちます。最低でも必要資金の1/10、理想は2割。金額の大小よりも「コツコツ積み上げた履歴」が重要です。
私は20年以上の現場で、自己資金を努力して準備した人が審査を通り、事業でも成功していく姿を数多く見てきました。あなたもまずは毎月の積立から始めてください。少額でも積み上げた資金は、金融機関に「覚悟」として伝わります。その一歩が、未来を切り開く力となるのです。
コメント