「なぜ自分の融資は通らなかったのか?」
20年以上、創業融資・運転資金・リスケ対応に携わってきた私のもとには、毎月のように同じ質問が寄せられます。
「書類も整えた」「実績もある」「返済もできるはずなのに」――。
しかし、銀行員から見ると“ある共通点”で落ちているケースがほとんどです。
本記事では、現場での実例・数値・人間観察を交えながら、融資審査で落ちる人の共通点をリアルに解説します。
読み終えるころには、「どうすれば通る人になれるか」が明確になります。
本論
第1章:最初の面談で“違和感”を残す人
体験談
2012年、ある飲食店オーナー希望者が「自己資金はあります」「売上見込みも大丈夫です」と自信満々に来店しました。
しかし、質問を重ねるとすぐに破綻。「仕入先?えっと…まだ決まっていません」「家賃は…多分このくらい」と曖昧。
数字ではなく「準備の浅さ」が透けて見える。
銀行員は「この人は“現場感覚”がない」と判断します。
👉 落ちる共通点①:準備不足を隠そうとする態度。
第2章:書類が整っていても「整いすぎている」
事実
最近はテンプレートやAIツールで綺麗な事業計画書を作れる時代です。
ところが、現場では「きれいすぎる書類」は逆に疑われます。
理由
・質問しても本人が説明できない
・数字の根拠が本人の言葉で語れない
・“借りたい金額”が明確でなく、上限いっぱい
👉 落ちる共通点②:自分の言葉で語れない事業計画。
第3章:「なぜ今なのか」が語れない人
創業や追加融資を申請するとき、銀行員は「タイミング」を重視します。
なぜ今?なぜこの規模?なぜこの地域?
この「3つのなぜ」に答えられないと、“成り行き起業”と見なされます。
実例
2020年、コロナ禍で美容室を開業した女性。
彼女は「家賃相場が下がった今こそ好機」と明確に答え、融資300万円を獲得。
逆に「なんとなく起業したい」と答えた男性は却下。
👉 落ちる共通点③:創業の必然性が薄い。
第4章:「借りる理由」がぼやけている人
審査官の目線
銀行員は「お金の使い道」を最も重視します。
資金使途があいまいな人は即NGです。
実際の会話
私:「この500万円は具体的に何に使いますか?」
申込者:「まぁ、開業準備とか運転資金とか…」
私:「具体的には?」
申込者:「ざっくりと…」
この瞬間、「返済能力以前に管理能力がない」と判断されます。
👉 落ちる共通点④:資金使途が曖昧。
第5章:数字の整合性が取れていない
典型的な落ちパターン
・売上予測が夢物語
・原価率が常識外れ
・人件費が極端に低い
実体験
2018年、飲食店開業希望者の計画書。
売上500万円/月に対し、原価率15%・人件費10%。
「ありえません」と即判断。
現実的な数字を“どうやって導いたか”を語れないと信頼は崩壊します。
👉 落ちる共通点⑤:数字が根拠を持たない。
第6章:面談で矛盾する発言をしてしまう
審査官の観察
銀行員は「話の一貫性」を細かく聞いています。
自己資金100万円と書かれていても、「貯金はいつから?」と聞くと答えが曖昧。
「実家の支援があります」と言った後に「両親は反対している」と言い出す人も。
👉 面談は“事実確認”というより、“人柄チェック”です。
落ちる共通点⑥:矛盾を生む無意識の虚勢。
第7章:家計管理ができていない
審査時に通帳を見る理由は、「お金の流れ=習慣」を見るためです。
光熱費が延滞、カード引落が遅延、貯金が出たり入ったり――。
これは全て「返済管理の危うさ」としてマイナス評価になります。
👉 落ちる共通点⑦:日常の金銭管理が雑。
第8章:「人格リスク」を軽視している
内部用語:「人物格付」
銀行員は会話や身だしなみ、言葉遣いから“信頼性”を数値化します。
「横柄」「他責」「感情的」「約束を守らない」――これらは融資以前の問題。
実例
「前の銀行が悪かった」と愚痴を言う人はほぼ全員不承認。
逆に「自分の準備不足でした」と話す人は前向きと評価されます。
👉 落ちる共通点⑧:人間力の低さ。
第9章:信用情報の確認を怠っている
データ
CIC・JICC・―この2つの信用情報機関を金融機関は必ず照会します。
携帯の分割払い延滞、カードローンの多重利用、奨学金の滞納。
これらがあるだけで審査は厳しくなります。
👉 落ちる共通点⑨:信用情報を確認していない。
アドバイス
事前に自分でCIC開示(1,000円)を行い、リスクを把握しておくこと。
第10章:質問への答えが“他人任せ”
審査官は「この事業を誰が主導するか」を見ています。
にもかかわらず、「税理士に任せています」「妻が管理してます」では通りません。
銀行は「あなた自身が経営の中心であるか」を見ています。
👉 落ちる共通点⑩:主体性の欠如。
第11章:書類提出の遅れ・修正忘れ
意外と多いのが、「書類を出し忘れた」「印鑑を忘れた」という初歩的ミス。
審査官は“期限を守れない人”にお金を貸すことを非常に嫌います。
これは融資以前に「ビジネスマナー」の問題。
👉 落ちる共通点⑪:遅延癖。
第12章: 「厳しすぎませんか?」という声に答える
確かに銀行の審査は厳しいです。
しかし、それは“融資=信頼の契約”だから。
お金ではなく「人」に貸しているのです。
書類・数字・経歴の奥にある「姿勢」「誠実さ」「継続力」を見る――
それが銀行員の本質的な仕事です。
結論
融資審査で落ちる人には、共通する10の特徴があります。
準備不足、数字の曖昧さ、タイミングの誤り、資金使途の不明確、そして“人としての誠実さの欠如”。
銀行員は書類より「あなたの一言一句」を見ています。
私は20年以上の現場で、「計画書の完成度よりも、本人の信頼性が高い人」が結果的に通っていく姿を何度も見てきました。
あなたも今一度、自分の言葉で事業を語れるか、数字の根拠を説明できるか、振り返ってみてください。
融資審査は、あなたの“信用ストーリー”を試される場なのです。


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