「融資面談って、何を聞かれるんですか?
「融資面談って、何を聞かれるんですか?」
20年以上、銀行と信用金庫で数百件の面談を担当してきた私は、この質問を何度受けたかわかりません。
書類審査で落ちる人の、半数以上が面談時です。
理由はシンプル――“質問の意図”を理解していないからです。
本記事では、銀行員の本音を交えながら「必ず聞かれる質問」と「理想的な回答例」を解説します。
読み終えたころには、あなたも面談に自信を持てるはずです。
本題
第1章:銀行員が面談で見るのは「数字」ではなく「人」
実体験
2005年、ある飲食店オーナー志望の男性が面談に来ました。
書類は完璧、数字も綺麗。しかし、質問に対して「税理士が作りました」としか答えられなかった。
結果は不承認。
その一方で、計画書にミスがあっても「自分の言葉」で説明できた女性は承認。
👉 結論:面談では「内容」よりも「説明力」。
銀行員は、“経営者の理解度”と“覚悟” を見ています。
第2章:よく聞かれる質問① ― 「なぜこの事業をやろうと思ったのですか?」
意図
創業動機=人物評価の出発点。
銀行は“お金の使い道”よりも“動機の純度”を重視します。
NG回答
「なんとなく」「儲かりそうだから」「友人に誘われて」
理想回答例
「10年間飲食業で培った経験を活かし、地域に根ざしたカフェを作りたいと考えました。
自分の強みは“地元の仕入れネットワーク”と“既存顧客100人”です。」
👉 ポイント:過去の実績+未来への意志 をセットで語る。
第3章:質問② ― 「どのくらいの資金が必要ですか? どう使いますか?」
意図
「資金管理能力」を確認しています。
事例
2021年、ある理容室開業希望者は「全部で500万円必要です」と言ったものの、内訳を聞かれると沈黙。
担当者の表情が一気に曇りました。
理想回答例
「必要資金は500万円で、うち設備費300万円、運転資金200万円です。
設備費の見積書はこちら、運転資金は半年分の固定費を見込んでいます。」
👉 ポイント:金額+内訳+根拠資料 が三位一体。
第4章:質問③ ― 「売上の根拠を教えてください」
審査官の視点
銀行は“売上予測”そのものより、“計算式”を見ています。
悪い例
「なんとなく月100万円くらいはいけると思います」
良い例
「客単価1,500円 × 1日30人 × 25日営業=月112万円を想定しています。
競合調査でも同規模店が平均110万円程度の売上です。」
👉 式を明示するだけで信頼度が上がる。
第5章:質問④ ― 「あなたの自己資金はいくらですか?」
銀行員の本音
これは“お金の問題”ではなく、“準備力の問題”です。
通帳の履歴を見れば「見せ金」か「積立」か一瞬でわかります。
理想回答例
「3年間で毎月5万円ずつ積み立て、現在180万円です。
全て普通預金口座にあります。」
👉 通帳コピーを見せながら語ると、説得力が倍増。
第6章:質問⑤ ― 「家族の理解は得ていますか?」
意図
経営は長期戦。家族の支援がなければ途中で挫折する可能性が高い。
体験談
私はかつて、配偶者が事業に反対していたケースを何度も見ました。
結果、途中で資金繰りが悪化して離婚 → 返済不能、という悲しい結末も。
理想回答例
「妻(夫)と十分に話し合い、リスクも含めて共有しています。家計管理は別口座で行い、生活費を確保した上で事業資金を組み立てています。」
第7章:質問⑥ ― 「競合との差別化ポイントは?」
意図
「再現性と継続性」を確認しています。
NG回答
「特にありません」「安くします」
理想回答例
「同地域に3店舗ありますが、うちは“仕入れ先の直送ルート”と“地域密着型のPR”で差別化しています。
原価率を下げつつ、利益率15%を目標にしています。」
👉 価格以外の強み を語るのがコツ。
第8章:質問⑦ ― 「融資を受けた後、返済はどうしますか?」
審査官の視点
「返済原資=キャッシュフローの理解度」を見ています。
良い回答例
「月の営業利益20万円のうち、10万円を返済に充て、残りは運転資金として積み立てます。
キャッシュフロー表はこちらにまとめています。」
👉 数字を具体化すれば、“返済能力”が見える。
第9章:質問⑧ ― 「もし売上が予定より下回ったら、どう対応しますか?」
意図
リスク対応力を測っています。
理想回答例
「最低ラインを月売上80万円と設定し、固定費削減とメニュー変更で対応します。
また、金融機関へ早めに相談し、資金繰り改善策を取るつもりです。」
👉 “計画倒れにしない柔軟性”が評価される。
第10章:質問⑨ ― 「経理・税務の管理体制は?」
審査官のチェックポイント
・freee、マネーフォワードなどのクラウド会計を使っているか
・税理士と顧問契約を結ぶ予定があるか
理想回答例
「会計はマネーフォワードで日々記帳し、税理士に月次レビューを依頼する予定です。」
👉 具体的なツール名を挙げると安心感が増す。
第11章:質問⑩ ― 「今後3年間の目標は?」
意図
短期的利益よりも“持続性”を確認しています。
理想回答例
「1年目は安定黒字、2年目で販路拡大、3年目にはスタッフを雇い組織化を目指します。
そのために初年度から利益率10%を確保できる構造を作ります。」
👉 “数字+行動計画”で未来を見せる。
第12章:銀行員が語る「落ちる回答」トップ5
- 「特に準備していません」
- 「税理士に任せています」
- 「家族にはまだ話していません」
- 「なんとかなると思います」
- 「他の銀行にも申請中です」
👉 準備不足・依存姿勢・他責思考 は全てマイナス査定。
第13章:現場からの裏話 ― 審査官の“本音”メモ
「面談で緊張するのは構いません。でも、“分からない”を“誤魔化す”人は危険。」
「質問に対して正直に“まだ準備中ですが○日までに整えます”と言える人は、信頼できます。」
👉 面談は「完璧な回答」よりも、「誠実な姿勢」が鍵。
第14章:面談前に準備しておくチェックリスト
| チェック項目 | 内容 | 完了 |
| 1 | 創業動機を一言で説明できる | □ |
| 2 | 必要資金の内訳を答えられる | □ |
| 3 | 売上予測を計算式で説明できる | □ |
| 4 | 自己資金の出所を説明できる | □ |
| 5 | 家族の理解を得ている | □ |
| 6 | 競合との差別化を言語化している | □ |
| 7 | 返済原資を説明できる | □ |
| 8 | リスク対応策を準備している | □ |
| 9 | 経理・税務体制を説明できる | □ |
| 10 | 3年後の目標を語れる | □ |
結論
融資面談で聞かれる質問は、すべて「あなたという人間を知るため」にあります。
数字の正確さよりも、“なぜその数字なのか”を自分の言葉で語れるかが鍵です。
そして、家族・経験・覚悟――そのすべてが銀行員の心に伝わる瞬間、審査は通ります。
私は20年以上の現場で、書類では劣っていても“人柄”で通った経営者を何人も見てきました。
質問に対して誠実に、そして論理的に答える――それが「融資に強い人」への第一歩です。


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