銀行員が解説する「創業計画書で落ちる人・通る人」の違い

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「創業計画書を一応書いたけれど、この内容で融資が通るのだろうか…」

私が20年以上、銀行の法人営業に携わる中で最も多く聞いた悩みです。実際、川崎市の支店で相談に来た30代の飲食店オーナーも「数字は埋めたが根拠がない」と青ざめていました。創業計画書は単なる形式的な書類ではなく、未来を示す地図。落ちる人と通る人の違いは、ほんの少しの準備の差にすぎません。


感情で落ちる「創業動機」と、物語で通る動機

創業計画書の最初の欄「創業の動機」。ここを軽視すると、審査官の心をつかめません。

実務の体験談

ある男性は「収入を安定させたいを」を強調、不承認でした。一方、別の女性は「母が営んでいた食堂を継ぎ、地域の高齢者に健康的な食事を提供したい」と記し、担当者は「社会的意義がある」と評価。結果は承認でした。

👉 ポイントは「個人の物語」と「社会的価値」を必ず組み合わせることです。


数字を軽視して落ちる「売上予測」と、データで通る予測

「売上は月100万円を想定しています」とだけ書いた計画書は落ちやすいです。

成功事例

  • 取得方法:国勢調査から商圏人口を確認
  • 計算式:商圏人口20,000人 × 想定来店率3% × 平均単価1,500円
  • 結果:月商900万円の市場ポテンシャル

根拠を示すだけで計画書の説得力は大きく変わります。

👉 日本政策金融公庫の公式ページ(創業計画書の書き方)でも「根拠の明確化」を強調しています。


差別化を欠いて落ちる「商品説明」と、独自性で通る説明

「安くて美味しい料理を提供」「便利なサービスを展開」――こうした表現は、審査官から「他と同じ」と見られてしまいます。

実際の現場での失敗

2015年、飲食店の計画書で「安さ」をアピールしただけのケースは却下。再提出で「地元農家と提携し、朝採れ野菜を使用したランチを提供」と書き換えたところ承認。

👉 強みを「他社比較」で具体的に示すことが重要です。


自己資金ゼロで落ちる「資金計画」と、覚悟で通る計画

銀行員が最初に確認するのは「自己資金の有無」です。

落ちた例

必要資金500万円、自己資金0円、借入希望500万円 → 不承認。

通った例

必要資金500万円、自己資金100万円(20%)、借入希望400万円 → 承認。

公庫のガイドラインでは「総投資額の1/10以上の自己資金」を推奨(公式:日本政策金融公庫 新規開業資金)。覚悟を見せる数字が不可欠です。


現実性を欠いて落ちる「収支計画」と、堅実さで通る計画

「初年度から黒字化!」と書く人は多いですが、過度に楽観的だと審査官は疑います。

修正の成功事例

  • 客数:1日30人
  • 単価:1,200円
  • 営業日数:25日
  • 売上=30 × 1,200 × 25 = 90万円/月 → 年間1,080万円

経費も家賃・人件費を現実的に盛り込み「初年度は赤字、2年目で黒字化」と修正したところ、承認を獲得しました。

👉 銀行員は「堅実さ」を最も評価します。


反論と再解釈:「結局は人を見ているのでは?」

多くの起業家が「計画書より人物次第」と言います。確かに人物評価は大きいです。

ただし、私はこう断言します。

  • 書類と本人の説明が一致しているかを必ずチェックする
  • 計画書の精度が低ければ、人柄評価も低く見られる
  • 計画書は「誠実さを可視化するツール」

👉 人物と計画書はセット。どちらが欠けても通りません。


結論(約300字)

創業計画書で落ちる人と通る人の差は、大きな能力ではなく小さな準備です。「動機に物語を込める」「数字に根拠を示す」「独自性を出す」「自己資金を用意する」「現実的な収支を書く」。この5つを押さえれば、融資担当者の見方は劇的に変わります。

私は20年以上の現場で、計画書を整えた人がその後も成長する姿を何度も見てきました。あなたも「落ちる側」ではなく「通る側」に立ってください。準備は裏切りませんし、未来は必ず開けます。

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